【報告】分科会1「対話するって、安全なの?」

第1分科会は、「対話をするって、安全なの?」とのテーマで対話を行った。

はじめにテーマを受けて、参加者から自由に発言がなされた。

  • 対話をしない、ということは危険なことで、困ったことだ。生きていることの意味を失いかねない。
  • 「対話」は「会話」とは違う。対話とは異なる価値観をすり合わせることだ。
  • アンサンブルをする際にも「価値観のすり合わせ」が重要だ。技術レベルということでは必ずしもないが、それぞれのもつアンテナの感度のようなものが違うとうまくいかない。
  • 共謀罪の問題でも「監視」の問題性が指摘されているが、たとえ監視されているわけではなくとも、人気のないところでの会話は「密談」として怪しまれる。逆に他の人が見えるところで大っぴらに話をすることは歓迎される。
  • 会話/対談/鼎談それぞれどのように違うのか?

一通り話しがされた後、もう少し具体的に言葉の意味を確認する必要があるとの判断から、「対話」という言葉の定義を試みることに。


  • 「対話」という言葉が使われるようになった歴史はあまり長くないのではないか?一昔前は、一般には使っていいなかったような気がする。アカデミックな印象。
  • 対話という言葉の意味は非常に範囲が広く、危険が潜んでいる。一方、会議やコミュニケーションは目的がある言葉として用いられているように感じ、危険が少ないように感じる。
  • 平田オリザの芝居に、アンドロイドが出演するものがある。アンドロイドの受け答えはあらかじめプログラミングされたもので、アンドロイドは自動的にセリフを流しているだけなのだが、俳優との言葉のやりとりの間にちょっとした「間」や「拍」が発生することで、観客はそこに何らかの意味を読み取ってしまう。何のイレギュラーも起きないはずの「安全な」アンドロイドとの会話なのに、人間同士が反しているように感じる。
  • アンドロイドについての話を受けてか、話題は対話の「テンポ」についてへと移っていく。

  • テンポのよい対話は「安全」を感じる⇔問いのある対話は「危険」を感じる
  • テンポのよい会話は相手の話をまとめてしまっていて、相手の考える機会を奪っているんかもしれない。
  • テンポのよい対話は外向きには安全に見えるかもしれないが、内側では危険なことが起こっているのではないか。

また、次のような発言もあった。

  • 経済の問題に留まらず、「対話」がないという生き方はpoorだと思う。生のクオリティの問題。
  • 「対話」ということばが意味するものは、「問答」と言った方が適切ではないか。
  • 言葉を用いるものではないが、クラッシック音楽には、曲そのものに「対話」を感じる。例えば前の小節に対して次の小節が応答する組み合わせになっていたり。

興味深い発言が様々に発せられ、話が広がっていく印象はあるが、進行の手際が鈍いゆえか、なかなか深化を実感することができないままに時間は流れてしまった。

残念ながら、今回はなんらかの問いを練り上げることはできなさそうだとファシリテーターは判断し、少なくとも「対話」という言葉の定義付けをすることを達成しようと、もう一度取り組むことに。

結果、次のような認識が提出されるに到った。

>対話によって複数の価値観が集って何か新しいものが生じ得る。ただし、言語を用いたコミュニケーションに限らない。


ところで、この認識を練り上げていく過程で、対話によって生じるものの価値、評価が問題となった。

>複数の価値観が集るところに豊かさがある

との認識が示される一方で、

>複数の価値観が集まり、ろくでもないものを産むのが危険な対話である

との考えも示された。

豊かさとは何か。

「ろくでもないもの」とは何か。

そして「危険」であるとは、果たしてどういうことなのか?

そもそも一体誰にとって?

「ろくでもない」ものと「異質なもの」とは、どのような関係にあるのか?

ファシリテーターとしては、全体を通じて対話が、局所的には跳躍を示しながらも平板に展開してしまってしまっと感じた。

原因を探るに、ひとつはテーマである「対話」において「安全」が問題になることの理由が充分に対話の俎上に上らなかったことにもあるのではないかと感じる。
(対話の「安全性」が問われるのはなぜか?誰がそれを問い、誰がそれを問われるのか?)

進行を任されたものとして、心残りな対話となった。

とはいえ今回は全体スケジュールや会場利用のリミットもあり、勝手な延長が許されるわけもない。

分科会1はひとまず、上記のような認識を確認して対話を終えた。

※本分科会の進行は、基本的にはこちらの要領にて行いました。

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分科会1「対話するって、安全なの?」

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